「言葉でない言葉で」

新聞連載詩Vol.165　挿話「あの日の小窓」
　　少し前の　過ぎた時を　振り返る！
　　　（自身の白黒写真とともに）
　　　　大崎タイムス(2018.4.28)掲載より



「言葉でない言葉で」

そういえば　
出会った時もそうだった
あなたは　ずっと前から
ここに居たかのように
わたしが見上げた空に居た
そういえば　
去年の今頃もそうだった
わたしは　きっと昨日から
ここに居ないと知って
あなたが発った空を見上げる
あなたとわたし
言葉を交わしたことがない
わたしはあなたに
言葉を掛けていたことを
知っていましたか
わたしはあなたから
たくさんの言葉を
受け取っていたことを
知っていましたか
何も言わずに去ったのは
あなたの優しさ
黄色の花が一つ咲いて
暖かな春を告げる日は
あなたとの別れの日
冬を共に過ごした　白き渡り鳥よ
実りの季節の過ぎた頃に
また　お会いしましょう
迷わず戻ってくるのだよ
もう聞こえていないかな


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「あの日の道端」

新聞連載詩Vol.164　挿話「あの日の小窓」
　　少し前の　過ぎた時を　振り返る！
　　　（自身の白黒写真とともに）
　　　　大崎タイムス(2018.4.21)掲載より



「あの日の道端」

雪解けて
わが足元を　流れ行く
みず輝きて　行方指すごと

春は足元から　やってくる
昨日とはちがう　静かな歌声が
きらきらと　流れている
きみの足元にも
新しい季節が　やってきた
あの歌を　口ずさみながら

春になる
その境目の　嵐去り
地に現れた　空の清しさ

クロッカスが咲いた
君を想っていたら
クロッカスが咲いていた
君が咲かせたの？
僕が君を探しているから
君が咲いている
あの日の道端に
笑顔の君が咲いている
３月１２日


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「春の鈴音」

新聞連載詩Vol.163　挿話「あの日の小窓」
　　少し前の　過ぎた時を　振り返る！
　　　（自身の白黒写真とともに）
　　　　大崎タイムス(2018.4.14)掲載より




「春の鈴音」

白鷺の
池を突きたる
鈴の杖
春の波紋に
氷われゆく

冬の色
田に残したる
北の使者
飛び立つ前の
落ち穂拾える

雪解けの
地のいろ見えし
旅立ちに
雁は翼を
試し飛びおり

春を呼ぶ
歌声ありて
開けし扉の
寒さ憶えど
梅そらに立ち


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「春の塊」

新聞連載詩Vol.162　挿話「あの日の小窓」
　　少し前の　過ぎた時を　振り返る！
　　　（自身の白黒写真とともに）
　　　　大崎タイムス(2018.4.7)掲載より





「春の塊」


笹の葉の
雪除け翳（かざ）す
一葉に
地に辿りきた
南天ふたつ

過ぎし路
温かきもの
見たような
振り返る先
福寿草笑む

ゆき丸く
地に沁みてゆく
その横で
水を湛えた
芽の突き出たり

冬という
季節を凌ぐ
柿の幹
その節にある
春の塊


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